しあわせさがし presented by 七瀬

承認欲求を持て余しながら、幸せを探す軌跡

大学院生から見た景色

ご覧いただきありがとうございます。

とある大学院生が感じたことです。

 

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自分はどうやらマイノリティらしい、と気が付いたのはつい最近のことである。

 

美容院に行って、担当の美容師さんに話しかけられた経験がない人はまずいないだろう。美容院にいるのだから、髪の話は必然として、たいていは天気やファッションの話題が多いのではないだろうか。無難だが、それゆえ人を不快にさせることも少ないだろう。

さて、この「無難な話題」の一つに、仕事・学業についてがある。

 

「学生さんですか?」あるいは「お仕事帰りですか?」。

こういった質問はとても多い。話題としてはたしかに無難だし、こちらとしても答えやすい。大学院生である私はこう答える。

「学生です」

大学全入時代とも言われる昨今、こう返す人は多いのだろう。美容師さんは続ける。

「今、何年生ですか?」

「大学生ですか?」と聞かれることもあるが、行きつく先は同じである。私は正直に答える。

「大学院の1年です」

 

問題はここからである。

私が大学院に通っていることを知った美容師さんから飛んでくるのは

「勉強お好きなんですね」

「どんな研究されてるんですか?」

の二択である。だいだい97%くらいこの反応とみて間違いない。

何が問題かというと、困るのだ。

 

「勉強お好きなんですね」

お好きじゃないんです。全然、好きじゃない。美容師さん含め、大体の人が「勉強」という言葉から連想するのは、中学、高校あたりのテストや受験のための勉強だと思うのだが、そんなもん好んでやる人いる?って感じである(いても極めて少数派だろう)。大学院に入るための勉強はたしかに進んで行ったけれど、それは必要だからやっただけで、必要なかったら絶対にやっていないと自信をもって言える。

そもそも、院進学理由は大半が「研究がしたい」「まだ学生でいたい」「周りが進学するから(理系の場合)」である。勉強がしたくて通うのは大学までであり、大学院は研究を行う場だ。

だから「勉強が好き」で大学院に通っているわけではないし、「大学院は勉強する場所」でもない。ただ、これは仕方ないことである。大学院生自体がめずらしく、何を言えばいいのか分からないのだろう。そんな相手に上に述べたようなことをいちいち説明しようとするのは、それこそナンセンスというものだ。

「そうですねぇ」

などと答えられる分、こちらはまだいい。

 

「どんな研究されてるんですか?」

むしろ厄介なのはこれである。これは本当に困る。困るというか、言われた瞬間うわ、きた…ってなる。なんなら「学生さんですか?」のあたりからうわー…ってなっている。
この質問をされた大学院生の本音は、まず間違いなく「どうせ分かりっこないだろう」である。これは頭の良し悪しの話ではない。その道の第一人者の教授であっても、自分の専門外の分野を完全に理解している人などいない。私が髪の手入れや美容液の配合が分からないのと同様に、美容師という髪の専門家に、私の研究内容が分かるはずもないのだ(理解されたら号泣である)。専門的な話を専門外の人にわかりやすくするのには非常に骨が折れるのである。私は髪を整えに美容院に来たわけで、頭を使いに来たのではない。それでいてこの質問には上手い逃げ方がない。
「言っても分からないと思いますよ」感が出るのは宜しくない。かと言って詳しく話したところで理解されないのは目に見えているし、そもそも美容師さんの方も、そこまでの興味がないだろう。これの質問はあくまで雑談の一部であり、詳しい内容は求められていないのだ。そして結局、
「理科系のー、実験とかやってますー」
というような曖昧な答えをすることになる。自分の研究についてこのような無意味な返答をすること自体にも微妙な気持ちになるが、とにかくこの質問は、精神的に疲れるので勘弁してほしいところである。

 

常々思っていたことをそのまま書いてしまったため、ものすごく上から目線の文章になってしまった気がするが、もちろんそんな意図はない。

ただ、知ってほしいのだ。

大学院生でない方々に。

興味で、あるいは好意で発した何気ない質問が、頭を悩ませていることを。

 

日頃研究で頭を使っている身だ。せっかく美容院に来たのだから、髪のケアとか、流行りのヘアアレンジとか、そういう話に花を咲かせたいのである。美容のプロには、そういう話をしてもらいたいのだが…

 

大学院生、というのはまだまだ少ないらしい。